正月早々最悪だ。




『  こ  と  だ  ま  』




「うぇぇぇぇぇぇぇ〜!?」

小さな紙切れを広げた途端に飛び込んできた文字に、思わず素っ頓狂な声を
上げてしまった。

そりゃ声も出るさ・・・。
はしゃいで引いたおみくじには、無情にも  の文字。
何度見直しても、でかでかと凶って書いてある。


・・・なんてこった。


三が日になんとか休みを取ることが出来た炎山と2人で、やっと初詣に来れたっていうのに・・・。


がくりとうなだれる。


「なんて声出してるんだ・・・。」
「だって・・・うう・・・。そうだ、炎山はどうだった?」
「どうってことはないさ。」
「俺にも見せて!」

すかさず、炎山の持っていた小さな紙片を奪い取る。
通知表と一緒で、やっぱり人のが気になるじゃん?
開いてみると・・・。




「えぇー?!炎山、大吉じゃんかよ!!」




なんだよなんだよなんだよ!!!
どうってことないなんて言ったくせに、大吉ひいてるじゃん!

なんだか馬鹿にされたような気がして、悔しくなってきた。


―被害妄想?
―嫉妬?


・・・わかってるよ。
別に炎山が悪いわけじゃないし、これは完全に八つ当たりだ。


でも、なんだか胸のあたりがモヤモヤして仕方が無い。


ブーたれる俺の隣で炎山が口を開く。

「別に大吉が出ても、俺にとっては大したことじゃない。」

「小さな紙切れ一枚に、自分のこれからの1年の運勢を全て委ねようなんて
思っていないしな。書いてあることが良いことでも悪いことでも、自分への
戒めとして見るだけだ。」
「〜〜〜〜〜!!!」


悔しい。なんだかとっても悔しい。
相変わらず炎山は考え方も大人びていて、
こんなコドモっぽいことで(ホントにコドモだけど)八つ当たりしてる自分が情けなくなって、余計に悔しくて・・・涙が滲んできてしまった。


いつもならたしなめてくれる青いナビも、今日に限っていない。
オペレーター同様、久々に休暇を取れた赤いナビとでかけてしまったのだ。


そんな俺を見て、溜め息混じりに炎山は言った。

「そんな顔するな。」
「うるさい。・・・コッチ見るなよ。」


涙を見られたくなくて顔を背けると、腕を掴まれて強引に引き寄せられた。




「いいか、紙切れに書いてある文字なんかより、一番大事にしたいのは、
熱斗、お前と2人だけで居られるこの時間なんだ。」





「だから、いつものお前らしく、笑った顔を見せてくれ。」



そういうと、不意打ちで頬に軽くキスをして微笑んで見せた。



「!!!!!」



こ の キ ザ 野 郎 ・ ・ ・ ! !


恥ずかしくて、自分でも顔が赤くなっていくのがわかった。
まったく、他にも人が居るってのに・・・!!
見られたらどうすんだよ!!



でも、なんだか、炎山の言ってくれた言葉で
「凶」の文字の呪力が消えた気がする。
よく見たら、恋愛のトコだけ「待ち人来たる」って書いてあるじゃん。

これは、炎山のコト・・・・?



「熱斗・・・?」
「ありがとう、炎山。」


炎山をその場に残し、おみくじが白い花のようにたくさんついた木に駆け寄った。



『・・・今年も2人で一緒に居られますように。』


そうつぶやきながらおみくじを枝に結ぶ。

炎山のところに駆け戻って手をそっと握ると、
人に見つからないように、繋いだ手を炎山のコートのポケットに
突っ込んで歩き出した。



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初炎熱SS。
2005年の年賀絵に続くおみくじネタでした。もう時期はずれだよとか言わない。
合宿先でみんなが大吉だの小吉だのを引いてる中、私1人だけ『凶』を引き当てて、
軽く鬱になったことがあるさ・・・。(泣笑)

ことだまとは「言葉にあると信じられている呪力」のこと。
言葉は時に「暴力」よりも酷い凶器になったり、ちょっとしたことでも「救い」になったりしますよね。
愛する人からのひとことが力になる、を、熱斗きゅん視点の炎熱で書いてみました。

今回、ヲトメな熱斗きゅんの隣で、炎山様がカッコつけすぎです。
きっとこのまま姫はじめになだれ込もうとしているに違いない!
アフロ姿で「スキー?告白デスカー?」と言ってる炎山様を見たときと同じくらい、
書いてて恥ずかしかたヨ!
私はどちらかというと、もっとヘタレで変態な方がいいんですが、
こんな炎山様は好きですか?
(誰に聞いてるんだ)

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