『恋はめんどくさい?』


「全くさー、情緒の欠片もないんだよ、ブルースは。」
「悪かったな。生憎そういうプログラミングはされていないんでな。」
「そういうことじゃないよ。」


ロックは流行りの海外ドラマにハマっているらしく、
うっとりしながら見入っている。
そこに付き合わされて一緒に観ている(正確には観させられている)のだが、
好きな者同士がお互いを思い遣るが故にわざと別れを切り出したり、
すれちがったりと、登場人物たちが理解不能なことを繰り広げている。
それを見て、「可哀想〜」とか「もどかしい〜」とか言いながら
眼をうるうるさせているロックも然り。





…理解に苦しむ。





その思いが、うっかり口をついて出てしまったらしい。
その音声を耳ざとく拾ったロックから非難を浴びせられる羽目になったわけだ。



少し前まで、好きとか嫌いとか、そういった類の感情自体、よくわからなかった。
炎山がカスタマイズする際に、戦闘能力に特化したプログラミングをしたから、
というのが第一の理由ではあるが、元来得意な分野ではないらしい。
ロックのおかげで「好き」という感情は学習したものの、
そういった恋愛の高等スキルはブルースにはまだ難しかった。




「好きなら好きと言えばいいだろう?何故そうしない?」
「それは…いろいろと事情があるんだよ。大人の事情ってやつ?
ま、ブルースにはまだ早…」
「…!」


突然、ブルースはロックの手首を掴むと、座っていたソファに組み敷いた。
メットを外しているので、普段はバイザーに遮られて見えない彼の瞳が
間近になる。
ルビーのような真紅の瞳が真っ直ぐにロックを捕えている。

その眼差しに声も出せないまま。
そのままゆっくりと顔を近付けていく。


(うわーうわー!!)


ロックの胸が早鐘のように鳴る。



唇が触れそうになるまであと1cm。

思わず瞳を閉じたロックに降ってきた言葉は。








「これでいいのか?」







カーッと自分の頬が赤くなるのが解る。



「…ブルースのばかぁっ!」


もう、損しちゃった!!
ブルースったら、ホントに天然なのかわざとなのか・・・!!
デリカシーがないんだから!!



道すがら、ロックはさっきのブルースの言葉にぷりぷり怒っている。







・・・でもちょっとだけブルースの瞳がカッコよくて、ドキドキしたなぁ。


さっきの出来事を思い出して、思わず出てしまった本音に
うふふと照れ笑いする。


怒ったり笑ったりの百面相を繰り広げているロックは
不審人物以外の何者でもなかったが、周りに誰もいなかったのが救いだった。





一方、走り去ったロックの置き土産の左頬の手形をさすりつつ、 溜息をまたひとつつくブルースであった。





…まったくもって、難解だ。




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タイトルは大好きなマッキーの曲から。
観ていたドラマのマネをしていいトコまで行くのに、
うっかり余計なことを言ってしまい、ロックに怒られるダメブルース。

恋が「ゴルフバッグの横に並んで売ってたら、とてもめんどくさいけど
ボクは恋を選ぶ」ようになるブルースが見られるのはいつの日か・・・。(笑)

ちなみにロックが観ているのは「ラストダンスは私と一緒に」と
「私の名前はキム・サムスン」です。

(いや、観てんのはアンタだろ)
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