『SILVER HEART』







仄暗い部屋。
俺はモニターに映る四角い闇を見続けている。

PETはテーブルの上に伏せられていて、周りの映像は取り込めない。
センサーで感知できるのは、自身のオペレータの気配と息遣いのみ。




…否。

映像を遮断され音声のみ聞かされているのは、オペレータの故意だ。



視界を奪われながら、暗い部屋から微かに聞こえる乱れた吐息と水音を、
センサーの感度を最大限に高めて拾い続けている。





…始まりはいつだっただろうか。


炎山様はPETを伏せるのに、わざと音声を切らない。
ナビである自分に見せたくない痴態であれば、
電源を落とせば済むことだ。

それなのに…。


戯れなのか、真意を掴めないまま、度々行為は繰り返されてきた。

まるで自らの劣情を吐き出す様を、俺に目隠しをしたまま聞かせるように。






ドクン。






視界を奪われることで余計に聴覚を刺激され、
くすぶるような澱んだ熱を感じる。


じわり、と。
本来感じる筈のない熱は、どんどん高く、広がっていく。

…このまま熱が蓄積し続ければ、回路がショートしそうだ。


自ら音声を最小に絞ることも、不可能ではないはずなのに、
それができずにいる。




…もっと声を聴きたい。




そう願ってしまったのは、紛れもなく俺自身だった。





「…炎山様…」

思わずすがるような声が洩れる。


毎回繰り返される度に、意思と関係なく首をもたげるどす黒いうねりは
大きくなる。
ダークオーラに取り込まれた時の感覚と似た、躯を苛む澱んだ熱。
それはどろりと体内に広がり、出口を求めている。







―自分ノモノニシテシマエ。




頭の片隅で声がする。




…ダークブルース?




ダークオーラは完全に消えた筈だ。

だとしたら、何故?

あの時現れたダークブルースと同じ、ダークオーラに触発されて生まれた、
もう1人の俺の人格プログラムなのか?




―炎山ガ欲シインダロ?


「何?!」



「俺は炎山様のナビだ!そんな事…!」



―アイツダッテソレヲ望ンデルカラ
 コンナコトヲ繰リ返シテイルンジャナイノカ?




炎山様がそれを望んでいる…?


―オマエ二抱イテ貰イタイノサ。
 アノ時モアンナニ欲シガッテ、ヨガッテタダロウ。

 …マアアノ時ハ、オマエノ意識ハ消シテ、俺ダケ楽シマセテモラッタガナ。

「何?!」


―オマエノ炎山様ガ、アレホドノ淫乱ダトハナ。
 クク…。


「黙れ…黙れ…ッ!!」

―クククッ…




声を必死に振り払う。
俺が…、炎山様を…?


理性はそれを否定しているが、体の熱は高まる一方で、下がる気配はない。






この熱をどうすればいい?
この熱をどうしたらいい?







迷うはずのない回路が迷い始める。
幾らデータを探しても答えはみつからない。



解析できないこの想いを胸に抱き、
どうすればいいのか解らないまま立ちつくしている。






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タイトルはこのSSのコンセプトにもなってる
機械が意識を持ち始めたら?という内容の、我が最愛のaccessの曲から。


初のブル炎SS。
そしてブルたん目隠し放置プレイ。(笑)

炎山を想いながらも、まだ2人は清い関係だとブルースは思ってます。
Dブルの時に炎山を凌辱しているけど、その記憶はブルースには残ってないので。
(自分捏造設定)

ある意味裏切られたブルースの、怒りの矛先が全て炎山に向けられ、
炎山を貶め、辱める為に生まれた存在がDブルースなので、
本来ナビには必要ない機能や知恵がいろいろと付いているわけです。
精神的にも肉体的にも蹂躙されるはずの行為が、炎山にとって
ブルースへの愛情を高めてしまったのは誤算ではありましたが。

ブルースはDブルースと違って、コピーロイドがなければまだ単独で
実体化できないので、見てるだけ。


炎山女王様は表向きはSっぽいのでおあずけ喰らわされてるブルが哀れですが、
ベッドでは下剋上ですからー。(何)


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